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ホンダが2026年3月期に最大6900億円の赤字に転落する見通しとなったと、3月12日に発表されました。
本田技研工業は12日、2026年3月期の最終損益が6900億円の赤字(前期は8358億3700万円の黒字)になる見通しだと発表した。従来予想の3000億円(前期比64.1%減)から下方修正した。
引用元: ホンダ、通期の最終損益予想を下方修正 3000億円の黒字から6900億円の赤字に(日本経済新聞)
詳しい内容は以下をご覧ください。
ホンダ上場来初の赤字転落|何がそんなに大きな損失を生んだのか
従来予想3000億円黒字からなぜ最大6900億円赤字になったのか
今期のホンダは、もともと「3000億円の黒字」を予想していました。
それが3月12日の発表で一気に「最大6900億円の赤字」へ転落。
差し引きで最大9900億円もの下方修正という、前例のない数字が並ぶことになりました。
なぜこれほどの差が生まれたのか。
答えはシンプルで、北米向けEV3車種の開発・発売を突然中止したことで、それまでつぎ込んできた開発費・設備費がまるごと損失として計上されることになったからです。
SNSでも「さすがにデカすぎる」「ホンダ大丈夫か」と話題になっているので、ここはしっかり把握しておきたいですね。
EV3車種の開発中止と除却損・減損損失の仕組み
今回、開発が中止されたのは以下の3車種です。
いずれも北米での生産・販売を予定していたモデルで、2025年1月のCES(世界最大の技術見本市)でお披露目されたばかりの注目車種でした。
Hondaは、事業環境の変化などを踏まえた四輪電動化戦略の見直しの一環として、北米で生産を予定していたEV(電気自動車)3車種の開発・発売の中止などを決定しました。これにより、2026年3月期連結業績において、8200億円~1兆1200億円の営業費用、1100億円~1500億円の持分法による投資損失を計上する見込みです。
引用元: 四輪電動化戦略の見直しに伴う損失の発生および通期連結業績予想の修正と今後の方向性について(Honda公式)
開発に使うつもりだった工場設備や開発資産は、もうそのEVを作らない以上「価値ゼロ」として帳簿に反映しなければなりません。
これが「除却損・減損損失」と呼ばれるもので、実際に現金が出ていくわけではなく、あくまで帳簿上の損失である点は後ほど詳しく説明します。
中国・北米・関税の三重苦が重なった背景
EV開発中止はある日突然決まったわけではありません。
ここ数年で事業環境が「想定をはるかに上回るスピードで変化した」と三部社長は述べています。
具体的には、北米・中国・関税という3方向からの逆風が同時に直撃しました。
この動画では、今回の発表の詳細をわかりやすく解説しています。
ホンダのEV戦略はどこで誤算だったのか
2021年に掲げた「2040年EV100%」という野心的な目標
そもそもホンダはなぜここまでEVに突き進んだのでしょうか。
きっかけは2021年4月。三部敏宏社長の就任会見でした。
先進国全体でのEV、FCVの販売比率を2030年に40%、2035年には80%、そして2040年にはグローバルで100%を目指します。
引用元: ホンダ新社長が会見で「2040年にはEVとFCEV」100%の目標を発表(EVsmartブログ)
日本の自動車大手として初めて「全車EV・FCV化」を明言した、業界でも最も野心的な宣言でした。
当時の世界情勢を振り返ると、EV推進の流れは確かに存在していました。
GMやボルボも同様の方針を打ち出しており、「EV一択」という方向性は世界的なコンセンサスのように見えていたのです。
三部社長はこの目標について「高い目標を掲げることで全員で目指す姿を共有したい」と述べており、確固たる技術的裏付けというより、強い意志表明という性格の宣言でした。
知らないと「なぜホンダだけが?」と思いがちですが、当時は自動車業界全体がEV一色に染まっていたのです。
トランプ政権・EV補助金廃止・規制緩和のダブルパンチ
ホンダのEV戦略が狂い始めたのは、米国の政策転換がきっかけでした。
トランプ政権の復活により、EVへの補助金が廃止され、環境規制も大幅に緩和されました。
消費者にとってEVを買う経済的メリットが薄れ、市場の成長速度が急減速。
「2026年から北米でEVを大量投入する」というホンダのシナリオは、根底から崩れてしまいます。
三部社長自身も「現実的には(2040年EV100%の目標は)達成困難と考えている」と述べ、方針の見直しを正式に認めました。
ここまで読んだ方なら、なぜホンダがこれだけの損失を出すことになったか、流れが見えてきたのではないでしょうか。
なぜホンダは中国で勝てなくなったのか
北米の政策転換と同じくらい深刻だったのが、中国市場での競争力低下です。
2021年当時、ホンダが中国でのEV展開を楽観視していた理由のひとつは「先行者優位」でした。
しかし実際に起きたのは、BYDをはじめとする中国勢の圧倒的な猛攻でした。
ホンダが「EVを準備している間」に、中国市場のルールが根本から変わってしまったのです。
この動画では、ホンダの決算の本当の意味をわかりやすく解説しています。
ホンダはこれからどうなる?配当・株価・ハイブリッド転換の行方
「2.5兆円損失」でも倒産しない理由
「最大2.5兆円の損失」という数字を聞いて、「ホンダ、本当に大丈夫なの?」と思った方は多いはずです。
結論から言えば、財務的に追い詰められている状況ではありません。
理由は2つあります。
「減損損失」とは、将来使う予定だった設備や資産の価値がゼロになったと帳簿に記録する処理のことです。
財布からお金が出ていくわけではなく、「投資した分を損として認める」という会計上の処理にすぎません。
ホンダの手元現金は約4.3兆円あり、自己資本比率も約60%と高水準を維持しています。
あるアナリストはこの状況について、財務的に追い詰められているというよりは、将来への投資の見通しを変えたという性格が強いと分析しています。
なお、配当については今回の業績修正があっても変更しない方針が発表されています。株主にとっては一定の安心材料と言えるでしょう。
ハイブリッド強化路線への転換で収益は回復できるのか
EVから軸足を移すホンダが次に向かうのは、ハイブリッド車(HV)の強化です。
北米では現在もホンダのハイブリッド車への需要は高く、トヨタのプリウスと並んで人気を集めています。
今後の四輪事業について、ホンダは米国でのEV普及の遅れを考慮し、ハイブリッド車への資源配分を増やし強化を図る方針を示しました。
ハイブリッドはホンダがもともと得意としてきた技術領域。
「原点回帰」とも言えるこの転換が実を結ぶかどうかが、今後の収益回復の鍵を握っています。
配当維持の方針と株価回復のシナリオ
株価への影響も気になるところです。
3月12日の業績下方修正発表後、ホンダの株価は私設取引システム(PTS)で一時9%程度下落する場面がありました。
ただし、今回の損失の本質が「現金支出を伴わない会計処理」である点と、配当維持の方針が示された点は、中長期の株主にとって一定の安心材料になります。
この動画では、株式投資の観点からホンダの今後を詳しく分析しています。
まとめ
ホンダの上場来初赤字は、EV戦略の大転換に伴う「整理損失」という性格が強いものです。
数字のインパクトは確かに大きいですが、財務の実態を見ると手元現金4.3兆円・自己資本比率60%と盤石な体力を維持しています。


つい数ヶ月前まで「3000億円の黒字」と予想していたのに、わずか一発表で約9900億円もの下方修正。
「ホンダ、いったい何が起きているの?」と感じた方は多いはずです。
この記事では、背景・原因・今後の見通しをできるだけわかりやすく整理してお伝えします。